EduDX Report      

DX化が進む学校教育
〜DX時代の学校教育-変わる社会・学校・学びを概観する-〜

2025年1月31日 宮田 純也(一般社団法人未来の先生フォーラム 代表理事/横浜市立大学 特任准教授

今日ではスマートフォン、生成AI、VRなどのテクノロジーは日進月歩で進化しており、これに伴い私たちの生活や仕事の在り方も劇的に変貌を遂げている。我が国をはじめ世界中が情報革命とその産物によって大きな変化を遂げている中で、学校教育にも大きな変化をもたらしている。

高度化・複雑化する社会の要請に応じて、学校教育も同様に高度化・複雑化が進展している。その中でも特に注目される変化がDX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進である。DXは「デジタル化を通じて社会や生活の形態を変革すること」と定義され、教育の分野では、SAMRモデルが示す以下の4つの段階を経ることで達成されるという考え方がある。詳細については『SCHOOL SHIFT』のP.27-28に赤堀先生が記述されているのでご参照されたい。

代替(Substitution)
増強(Augmentation)
変容(Modification)
再定義(Redefinition)

これらのプロセスは、現在の学校教育において進行中であり、情報革命による社会変容と同様に、学校の在り方を再定義する抜本的な変化をもたらすと考えられる。特に、DX化が進むことで、学校は従来の延長線上にはない新たな専門性を求められる状況に直面している。

DX化の推進に伴い、教員が担うべき業務や責任も増大しているが、これを学校単独で対応することは困難である。多忙化の問題は、教育の高度化・複雑化の進展に伴う構造的な課題であり、これを解決するためには、「学校自前主義」から脱却し、ICT技術や人的リソースを持つ企業との連携が不可欠である。こうした取り組みは、学校教育を次なる段階へと進化させるための土台となる。

日本では「GIGAスクール構想」がその一環として進められている。この構想は、単なる学校教育のデジタル化にとどまらず、「Global Innovation Gateway for All」の略として、全国の公立学校で一人一台端末、高速ネットワーク、クラウド環境を整備し、誰一人取り残されることのないグローバルな教育環境を目指している。Gatewayという名前の通り、デジタル技術の利活用とそれに伴う変容によって、これからの学校は閉鎖性から開放性という性質を持ち、様々な営みが再定義されることになるだろう。例えば生成AIの登場は、頭脳機能の代替によって汎用的な業務が代替(Substitution)され、それが増えて(Augmentation)いったとき(デジタルシフト)、仕事のプロセスなどの形が変わり(Modification)、一連の業務が再定義(Redefinition)される(DX)というプロセスを経る可能性がある。

少し具体的に踏み込んで説明すれば、生成AIは文字情報として存在(平面)し、人間は文字情報にとらわれない空間的存在(立体)という違いがある。生成AIは私たち人間の頭脳機能を置き換えて補強することができ、その流れが広がっていくことが大いに予想されるが、学校の授業はどのようにDXするだろうか?授業という概念は残るかもしれないが、立体的な学び(自然や人間とのふれあい、フィールドワークなどの多様な体験、ICTを活用した協働学習など)の要求が高まり、従来の知識伝達から知識創造、あるいは価値創造を行う授業という授業観の再定義が行われるかもしれないことが推測される。

このような変化の中では、従来の授業観をアンラーン(学びほぐし)する必要がある。生成AIをはじめとする情報通信技術を活用する中で、従来型の教育の役割や教師の存在意義そのものが再定義される可能性もある。授業の形式は、「教える」ことから「共に学び、共に創造する」ことへと変化しつつある。

さらに、学びの場そのものがDX化の影響を受けることで、物理的な学校のあり方も変わり得る。たとえば、e-learningを組み合わせたハイブリッド形式での学習、バーチャルリアリティ(VR)や拡張現実(AR)の技術を導入した仮想教室が現実の教室と融合することで、地理的制約を超えて多文化的な交流が可能となる。学習者はグローバルな視点から多様な人々とリアルタイムで協働学習を行い、社会課題の解決や新たな価値の創造に挑戦できる環境が整うだろう。

DX時代の学校教育が成果を挙げるためには、単なる情報通信技術の導入に留まらず、それに見合った教育課程の刷新と、教員の専門性向上が求められる。教員は生成AIをはじめとする情報通信技術を適切に活用し、子どもの思考力や創造力を育むための指導方法を継続的に学び、改善していく必要があるだろう。また、カリキュラム設計においても、固定的な内容ではなく、社会の変化や技術の進展に対応できる柔軟性が重要である。

これらの取り組みが進むことで、学校教育は再定義とアップデートを遂げ、これからの時代により対応する多様な学びのスタイルを支える環境へと発展していくであろう。学校教育のDXは、その実現を加速させる鍵となる。生成AIはこのような学校教育の再定義とアップデートへ向けて根本的な問いを生みだしているため、次章では生成AIと学校教育に焦点を当てて記述する。

参考文献:

・宮田純也 著. (2025). 『教育ビジネス』. クロスメディア・パブリッシング.

・宮田純也 編著. (2023). 『SCHOOL SHIFT』. 明治図書.

・宮田純也 編著. (2024). 『SCHOOL SHIFT2』. 明治図書.

・リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット 著、宮田純也 監修. (2023). 『16歳からのライフ・シフト』. 東洋経済新報社.

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