はじめに
企業で研修を続けていると、受講履歴について確認したい場面が少しずつ増えてきます。
例えば、
- 去年、この社員は必須研修を修了していたか
- 資格更新のために、次回はいつまでに受講する必要があるか
- 異動した社員が、以前どの研修を受講していたか
- 同じ研修を複数回受講した場合、過去の実績を確認できるか
といったケースです。
受講者や研修の数が少ないうちは、Excelやスプレッドシートでも対応できます。一方で、研修の種類や対象者が増えてくると、「記録は残っているものの、必要な情報をすぐに確認できない」ということも起こりやすくなります。
研修履歴管理では、単に受講者一覧を保存するのではなく、必要なときに必要な情報を確認できる状態にしておくことが大切です。
この記事では、研修履歴管理の基本から、管理しておきたい情報、「受講」と「修了」の違い、人事異動や再受講への対応、ExcelとLMSの使い分けまで、検討するときのポイントを整理します。
- 研修履歴管理とは何か、どのような場面で必要になるのか
- 研修履歴として管理しておきたい主な情報
- 「受講」と「修了」を分けて考える理由
- 人事異動、再受講、有効期限がある場合の考え方
- Excel・スプレッドシートとLMSの使い分け
研修履歴管理とは
研修履歴管理とは、社員や受講者について、いつ、どの研修を受講し、どこまで完了・修了したのか、どのような結果だったのかを継続して記録し、必要なときに確認できるようにすることです。
研修履歴は、例えば次のような場面で利用されます。
- 必須研修を期限内に修了しているか確認する
- 研修の受講期限や、資格・認定の有効期限を確認する
- 過去の受講状況を踏まえて、次に受講する研修を検討する
- 本人や上司から過去の受講状況について問い合わせを受ける
- 監査や社内確認の際に研修実績を確認する
このため、必要になる情報は「受講したかどうか」だけとは限りません。
研修の目的や履歴の利用方法によって、修了日、テスト結果、有効期限、受講時の所属など、確認しておきたい情報は変わります。
研修履歴として管理したい情報と確認しておきたい点
研修履歴として必要になる情報は、組織や研修によって異なります。
例えば、必須研修の実施確認であれば修了状況や修了日が重要になります。資格や認定の更新管理であれば、有効期限や次回受講期限も必要になるでしょう。
すべての情報を残すのではなく、後からどのようなことを確認したいのかを考えながら、必要な項目を整理することがポイントです。
主な情報を分けて見ていきます。
1. 誰の履歴かを確認するための情報
まず必要になるのは、その履歴が誰のものなのかを識別する情報です。
例えば、
- 氏名
- 社員番号
- メールアドレス
- 所属部署
- 役職
- 拠点
などがあります。
氏名だけで管理すると、同姓同名や氏名変更があった場合に履歴を追いにくくなることがあります。そのため、社員番号など、継続して本人を識別できる情報があると管理しやすくなります。
所属部署などの組織情報については、現在の所属を確認したいのか、受講時点の所属を確認したいのかによって、残しておきたい情報が変わります。
2. 何を受講したのかを確認するための情報
次に、どの研修を受講したのかを識別する情報です。
例えば、
- 研修名
- 研修区分
- 実施年度
- コース名
- 教材や研修内容の版
などがあります。
同じ名称の研修を繰り返し実施する場合、研修名だけではどの実施回の研修なのか判断できないことがあります。
研修内容を更新する場合も、年度や版を分けておくと、どの内容を受講したのか確認しやすくなります。
3. 受講・修了に関する情報
受講の状況や結果を確認するためには、例えば次のような情報があります。
- 受講開始日・受講日
- 教材や学習活動の完了状況
- コースの修了状況・修了日
- テスト結果
- 得点
- 合否
すべての研修でこれらを記録する必要があるわけではありません。
例えば、研修に参加したことを確認できればよい場合と、すべての教材を完了し、さらにテストに合格したことまで確認する必要がある場合では、残しておきたい情報が異なります。
また、オンライン研修では、一つひとつの教材や学習活動が完了していることと、研修全体を修了していることを分けて確認する場合もあります。
4. 有効期限・再受講に関する情報
一定期間ごとに再受講が必要な研修では、1回の受講履歴だけでなく、いつまで有効なのか、次にいつ受講する必要があるのかも確認できると管理しやすくなります。
例えば、
- 修了日
- 有効期限
- 次回受講期限
- 更新・認定の状況
- 再受講日
- 過去の受講・修了実績
などが考えられます。
再受講のルールも研修によって異なります。
例えば、「修了から1年後に再受講する」「毎年度受講する」「資格や認定の有効期限までに再受講する」といったケースがあります。
そのため、現在の状態だけでなく、過去にいつ修了し、その結果がいつまで有効だったのか、次にいつ受講する必要があるのかを確認できるようにしておくと、継続的な研修を管理しやすくなります。
同じ研修を複数回受講する場合も、最新の結果だけに置き換えるのではなく、各回の実績を履歴として確認できるようにしておくと、これまでの受講状況を追いやすくなります。
5. 誰が履歴を確認できるか
研修履歴では、何を記録するかだけでなく、誰がどの情報を確認する必要があるのかも考えておきたいポイントです。
例えば、
- 受講者本人
- 上司や管理者
- 研修担当者
- 人事担当者
- 監査や確認を担当する部門
など、立場によって必要になる情報や確認範囲が異なる場合があります。
修了状況のみを確認するのか、詳細な成績についても閲覧するのかは、組織の状況や目的によって異なります。
そのため、業務上必要な範囲に応じて、閲覧できる情報を分けておくと運用しやすくなります。
6. 後から取得できない情報もある
研修履歴の中には、後から必要になっても、過去にさかのぼって取得できない情報があります。
例えば、受講時点の所属や、その時点での学習活動の完了状況などは、現在の情報だけでは再現できない場合があります。
そのため、今すぐ必要な情報だけでなく、後から確認する可能性がある情報についても、あらかじめ記録しておく必要があるかを考えておくと安心です。
Moodleでは、学習活動や修了状況など、後から確認できる記録があります。ただし、受講時点の所属など、必要な情報がすべて学習履歴とともに自動的に保存されるとは限りません。後から確認したい情報については、どのように記録・保持するかをあらかじめ確認しておくことが大切です。
「受講」と「修了」の違い
研修履歴を考えるときに、特に整理しておきたいのが「受講」と「修了」の違いです。
例えば、eラーニングで動画教材を利用している場合、
動画を視聴したこと=研修を修了したこと
とは限りません。
動画視聴に加えて、
- テストで一定点数以上を取る
- アンケートに回答する
- すべての教材を完了する
- 課題を提出する
といった条件を満たしたときに修了とするケースもあります。
このような研修では、
- 教材を利用したり、研修に参加したりしたという「受講」
- 組織が定めた条件を満たした「修了」
を分けて確認できる方が、履歴の意味が明確になります。
どこまでを受講とし、何をもって修了とするかは、研修の目的によって異なります。
研修ごとに修了条件を確認し、その条件と履歴として記録している内容が一致しているかを見ておくとよいでしょう。
人事異動や組織変更がある場合
研修履歴を社員情報と結びつけて管理する場合、人事異動や組織変更によって考え方が分かれることがあります。
例えば、
- 現在、営業部に所属している社員が過去にどの研修を受講したか知りたい
- ある研修を受講した当時、どの部署に所属していたか知りたい
という2つの確認では、必要になる情報が異なります。
現在の所属だけを常に更新している場合、現在の組織別には確認しやすい一方で、受講当時の所属は分からなくなることがあります。
反対に、受講時点の所属を履歴として残しておけば、過去の組織情報を確認できます。
過去の研修実績を確認するときは、現在の所属で見るのか、受講当時の所属で見るのかによって、必要な情報が変わります。
そのため、「現在の社員情報」と「受講時点の履歴として何を残したいのか」を分けて整理すると考えやすくなります。
人事システムとLMSを連携する場合にも、現在の社員情報を更新することと、過去の研修履歴をどのように残すかは、分けて考える必要があります。
研修履歴はどのくらい残せばよいか
研修履歴の保存期間に、一律の答えがあるわけではありません。
例えば、
- 研修の目的
- 社内規程
- 資格や認定の有効期間
- 法令や契約上の要件
- 監査や確認の必要性
などによって、必要な期間は変わります。
また、退職者についても、「LMSなどのアカウントを利用できなくすること」と「過去の研修履歴を削除すること」は別の判断になります。
研修履歴を検討する際には、
- 誰の履歴を残すのか
- どのくらいの期間残すのか
- 誰が確認できるようにするのか
- 保存期間を過ぎた履歴をどう扱うのか
といった点も整理しておくと、後から判断しやすくなります。
Excel・スプレッドシートでも研修履歴は管理できる?
受講者や研修の数が少なく、更新頻度も高くない場合は、Excelやスプレッドシートでも研修履歴を管理できます。
例えば、
| 社員番号 | 氏名 | 研修名 | 受講日 | 修了日 | 結果 |
|---|
のような一覧を作成して管理する方法です。
この方法は、管理対象が少ないうちはシンプルで使いやすいという利点があります。
一方で、研修数や対象者が増えてくると、
- 研修ごとに複数のファイルが存在する
- 同じ社員の履歴が複数の場所に分かれている
- 誰が最新版を持っているか分からない
- 未受講者や期限切れの対象者を毎回確認する必要がある
- 人事異動のたびに所属情報を更新する必要がある
- 過去の履歴を探すのに時間がかかる
といった課題が出てくることがあります。
そのため、「Excelでは管理できるか」だけでなく、「現在の運用でどの程度の負担が発生しているか」を基準に考えるとよいでしょう。
システム管理を検討する目安
Excelやスプレッドシートで管理できていても、すぐにシステムへ移行する必要があるとは限りません。
一方で、更新や確認にかかる手作業が増え、担当者の負担が大きくなってきた場合は、管理方法を見直す一つのタイミングです。
例えば、
- 研修管理のための確認や更新作業に多くの時間がかかっている
- 研修数や対象者が増え、複数のファイルや表を管理することが負担になっている
- 人事異動などのたびに、多くの情報を手作業で更新している
- 必要な履歴を探したり集計したりする作業が増えている
- 管理方法が特定の担当者に依存している
といった状態が増えてきた場合は、LMSなどのシステムを利用した管理を検討する一つの目安になります。
LMSで研修履歴を管理すると何ができる?
LMS(学習管理システム)では、教材や研修コースを提供しながら、受講者の学習状況や結果を記録できます。
一般的には、
- コースへの登録
- 教材の利用状況
- 学習活動の完了状況
- テスト結果
- 評点
- コースの修了状況・修了日
などを確認できます。
そのため、オンライン研修を実施しながら、その受講・修了履歴を継続して残したい場合には、LMSを利用する方法があります。
また、LMSによっては、一つの研修だけでなく、複数の研修をまとめた学習プログラムや、一定期間ごとの再受講、認定の有効期限や更新などを管理できるものもあります。
例えばMoodle Workplaceでは、複数のコースをまとめたプログラムや、有効期間を持つ認定・再認定を管理する仕組みがあります。
受講者数や研修数が増えた場合でも、一つのシステム上で履歴を継続して確認しやすくなることが、LMSを利用するメリットの一つです。
LMS導入前に整理しておきたいこと
LMSを導入すると、受講状況や修了状況をシステム上で記録できるようになります。
ただし、システムを導入するだけで、研修履歴の考え方そのものが自動的に決まるわけではありません。
例えば、
- 何を履歴として残したいのか
- どの条件を満たしたら修了とするのか
- 再受講した場合にどの履歴を確認したいのか
- 人事異動後の所属情報をどのように扱うのか
- どの程度の期間、履歴を保存するのか
- 誰がどの履歴を確認する必要があるのか
- 再受講やコースの更新後も、必要な過去の履歴を保持・確認できるか
といった点を、組織や研修の目的に合わせて整理・確認しておくとよいでしょう。
LMSを検討する場合も、まず現在の運用を整理しておくと、自社に必要な機能を判断しやすくなります。
Moodle LMSやMoodle Workplaceで利用できる機能については、機能一覧やMoodle活用ガイドでも紹介しています。
研修履歴管理を見直すときのチェックポイント
現在の研修履歴管理について、次のような点を確認すると整理しやすくなります。
- 過去に誰がどの研修を受講したか確認できるか
- 「受講」と「修了」を区別して確認できるか
- 教材や学習活動の完了状況を確認する必要があるか
- 同じ研修を複数回受講した履歴を確認できるか
- 有効期限や次回受講期限を確認できるか
- 必要な場合に受講時点の所属を確認できるか
- 退職者を含め、必要な期間の履歴を確認できるか
- 本人、上司、研修担当者など、立場に応じて必要な履歴を確認できるか
- 履歴を探したり集計したりする作業に時間がかかっていないか
すべてを最初から細かく管理する必要はありません。
現在の研修で「後から何を確認することが多いか」「確認するときに困っていることは何か」を洗い出すと、自社に必要な履歴管理の形が見えやすくなります。
まとめ
研修履歴管理とは、単に受講者の一覧を残すことではなく、必要なときに、誰が、いつ、どの研修を受講し、どのような結果だったのかを確認できるようにしておくことです。
どのような情報を残すべきかは、研修の目的や履歴の利用方法によって変わります。
特に確認しておきたいのは、
- 受講と修了をどのように区別するか
- 同じ研修を繰り返し受講する場合に履歴をどう残すか
- 人事異動前後の所属情報をどう扱うか
- 有効期限や再受講をどう管理するか
- 履歴をどのくらいの期間保存するか
- 誰がどの履歴を確認する必要があるか
といった点です。
まずは、現在の研修について、「後から何を確認したいのか、そのためにどの情報が必要なのか」を整理してみると、自社に合った研修履歴管理の方法を考えやすくなります。
関連情報
執筆:株式会社イーラーニング コンテンツ編集部
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