Moodleのオンライン試験を不正防止で守る:Safe Exam Browser(SEB)活用ガイド

オンライン試験で「他のサイトを見ていないか」「問題文をコピーしてChatGPTなどのAIに入力していないか」と気になったことはありませんか? MoodleのクイズにSafe Exam Browser(SEB)を組み合わせることで、こうした懸念を大幅に軽減できます。

本記事では、サイト管理者・先生向けの設定手順学生への案内方法を順に解説します。専任のIT担当者がいない環境でも対応できるよう、設定項目の意味からていねいに説明します。


Safe Exam Browserとは

Safe Exam Browser(SEB)は、試験専用のカスタムWebブラウザです。Windows・macOSに対応したオープンソースソフトウェアで、起動中は通常のブラウザ操作を強制的に制限します。

主な制限内容は次のとおりです。

  • ブラウザが全画面表示に固定され、URLバーや戻る・進むボタンが使えない
  • 他のアプリケーションへの切り替えが禁止される
  • コピー&ペーストが無効になる(問題文をコピーしてChatGPTなどのAIに貼り付けることができない)
  • スクリーンショットが無効になる
  • デュアルディスプレイ(2画面)環境では、サブモニターが使用できなくなる
  • 試験が終わるまでウィンドウを閉じられない

Moodleのクイズ設定と連携させることで、「SEBを使っていない学生はそもそもクイズを開けない」という状態を作れます。

注意:SEBは不正行為を完全に防止できるものではありません。 あくまで「難しくする」ツールです。監視カメラや別端末での参照など、SEBが防げない手段は存在します。本機能の特性を理解したうえで活用してください。


対応OS

OS対応状況
Windows 10(バージョン1803以降)・Windows 11✅ 推奨
macOS 11(Big Sur)以降✅ 推奨
iOS(iPad・iPhone)⚠️ 動作はするが不正防止効果が限定的
Android・ChromeOS・Linux❌ 非対応

iOSについて: SEBのiOS版は一応動作しますが、iOS側の仕様上、他アプリへの切り替え制限などが十分に機能しないケースがあり、不正防止の効果はWindows・macOSに比べて大幅に限定的です。可能であればPCでの受験を案内してください。


サイト管理者の準備

追加プラグインは不要

Moodle 4.xでは、SEBとの連携機能が標準で組み込まれており、追加プラグインのインストールは不要です。以前のバージョン(3.8以前)では別途プラグインが必要でしたが、現在はそのまま使えます。

テンプレートとは何か

テンプレートとは、「このSEBでどんな制限をかけるか」という設定内容をひとまとめにして、サイト全体で使い回せるようにしたものです。

テンプレートがあると、先生はクイズ設定画面でテンプレートを選ぶだけでSEBを適用できます。テンプレートがない場合でも先生が手動で設定できますので、テンプレートは必須ではありません。まずはテンプレートなしで運用を始め、同じ設定を何度も使うようになったらテンプレート化するのがよいでしょう。

テンプレートの作成・登録手順

テンプレートの作成には、SEBアプリの専用設定ツールは不要です。Moodleの画面上で一度設定を作り、それをファイルとして書き出してテンプレートとして登録できます。

手順1:ベースとなる設定をクイズで作る

任意のクイズ(練習用のクイズで構いません)の設定画面を開き、「Safe Exam Browser」セクションで「Yes – 手動設定する」を選択します。各項目を希望する内容に設定したら「保存してディスプレイへ」をクリックします。

手順2:設定ファイルをダウンロードする

クイズのトップページ下部に「設定をダウンロードする」ボタンが表示されます。これをクリックすると .seb ファイルがダウンロードされます。このファイルがテンプレートの実体です。ダウンロード後はMoodleへの登録に使うだけで、登録完了後はローカルに保管しておく必要はありません(将来テンプレートを作り直す際のために保管しておくことも可能です)。

手順3:Moodleにテンプレートとして登録する

サイト管理 > プラグイン > 活動モジュール > クイズ > Safe Exam Browser templates」を開き、「新しいテンプレートを追加する」をクリックします。テンプレート名を入力し、手順2でダウンロードした .seb ファイルをアップロードして、「有効」にチェックを入れて保存します。

これ以降、先生はクイズ設定画面で「Yes – 既存テンプレートを使用する」を選択できるようになります。

注意: テンプレートは一度登録すると、そのテンプレートを使用しているクイズが存在する限り削除できません。テンプレート名は後から変更できないため、わかりやすい名前をつけておきましょう。


クイズへのSEB設定手順

1. 設定画面を開く

クイズの編集画面を開き、「試行に対する追加制限」セクションまでスクロールします。セクション内に「Safe Exam Browser」という折りたたまれた項目があります。クリックすると展開されます。

2.「Safe Exam Browserの使用を要求する」を選択する

展開後、最初に表示されるのが「Safe Exam Browserの使用を要求する」という項目です。

選択肢説明
No(デフォルト)SEBなしでもクイズを開ける
Yes – 手動設定するMoodleの設定画面上でSEBの制限内容を直接設定する。テンプレートがない環境ではこれを選ぶ
Yes – 既存テンプレートを使用する管理者が登録したテンプレートを適用する。テンプレートが1つも登録されていない場合はこの選択肢自体が表示されない
Yes – 自分の設定ファイルをアップロードSEBの設定ツールで作成した .seb ファイルをMoodleにアップロードする。細かいカスタマイズが必要な上級者向けで、通常は不要
Yes – SEBクライアント設定を使用するMoodle側は設定を持たず、学生に別途 .seb ファイルを配布して使わせる旧来の方式

テンプレートがない環境では「Yes – 手動設定する」を選んでください。 選択すると、以下の設定項目が表示されます。

3. 各設定項目の意味と推奨値

「Yes – 手動設定する」を選ぶと以下の項目が表示されます。それぞれの意味と推奨値を説明します。


① Safe Exam Browserダウンロードボタンを表示する

クイズの開始ページに「Safe Exam Browserをダウンロードする」ボタンを表示するかどうかの設定です。学生がSEBをまだインストールしていない場合に、公式サイトのダウンロードページへ誘導できます。

  • Yes(推奨):学生の混乱を防ぐためにYesのままにしておくのが無難です。

② この終了リンクと共にSafe Exam Browser終了ボタンを表示する

試験提出後の画面に「SEBを終了する」ボタンを表示し、ボタンを押したときの遷移先URLを設定する項目です。たとえばMoodleのトップページURLを入力しておくと、試験終了後に学生がそのページへ戻れるようになります。

  • 通常は空欄のままで問題ありません。空欄の場合、このボタン自体が表示されません。

③ ユーザに終了を確認する

「②」でURLを設定した場合に、そのリンクが検出されたとき「本当に終了しますか?」という確認ダイアログを表示するかどうかの設定です。②を使わない場合はこの設定は影響しません。

  • ②を使う場合はYes(推奨):誤操作による意図しない終了を防げます。

④ SEBの終了を有効にする

学生がSEBの終了ボタン・Ctrl+Q・Cmd+Qを使ってSEBを閉じる操作を「できる状態にするか」の設定です。

  • Yes(推奨):試験終了後に学生がSEBを閉じられるようにします。
  • Noにすると終了ボタン自体が消え、学生はSEBを閉じられなくなります。⑤の「小テストパスワード」も機能しなくなるため、通常はYesにします。

④と⑤の関係: 「④ SEBの終了を有効にする」はSEBを閉じる操作を「できる状態にする」設定で、「⑤ 小テストパスワード」はその操作をしたときに「パスワード入力を要求する」設定です。セットで使うことで「パスワードがなければ終了できない」という状態を作れます。


⑤ 小テストパスワード

学生がSEBを終了しようとした際(終了ボタン・Ctrl+Q・Cmd+Q)に入力を求められるパスワードです。受験の開始や回答の提出には影響しません。

  • 設定を推奨します。 パスワードを設定すると、試験中に学生が誤ってSEBを終了することを防げます。試験終了のタイミングで教員が口頭でパスワードを伝え、全員が一斉にSEBを閉じる、という運用と組み合わせると効果的です。
  • 未入力の場合は、終了しようとすると「本当に終了しますか?」という確認ダイアログのみ表示されます。

⑥ 受験中のリロードを許可する

試験中に学生がブラウザを再読み込み(F5キー・Cmd+R)できるかどうかの設定です。

  • Yes(推奨):通信の一時的な不安定などで画面が固まった場合に、学生自身で対処できます。Noにするとリロードできず、トラブル時の対応が困難になります。

⑦ SEBタスクバーを表示する

SEBの画面下部に操作バー(時刻・リロードボタンなど)を表示するかどうかの設定です。

  • Yes(推奨):学生が現在の時刻や接続状況を確認できます。⑧〜⑩の各ボタンはこのタスクバー内に表示されるため、タスクバー自体をNoにすると⑧〜⑩の設定が無効になります。

⑧ リロードボタンを表示する

SEBタスクバー内のリロードボタンを表示するかどうかの設定です。⑥「受験中のリロードを許可する」がYesの場合に有効です。

  • Yes(推奨):トラブル時に学生が自分で対処しやすくなります。

⑨ 時間を表示する

SEBタスクバーに現在の時刻を表示するかどうかの設定です。

  • Yes(推奨):学生が試験の残り時間を意識しやすくなります。Moodleのクイズにもカウントダウンタイマーがありますので、併用できます。

⑩ キーボードレイアウトを表示する

SEBタスクバーにキーボードレイアウトの切り替えメニューを表示するかどうかの設定です。

  • 日本語環境のみであればYes・Noどちらでも実害はありません。

⑪ Wi-Fiコントロールを表示する

SEBタスクバーにWi-Fiの接続状況・切り替えメニューを表示するかどうかの設定です。

  • No(推奨):学生がWi-Fi設定を操作できてしまうリスクを避けるため、通常はNoにします。

⑫ オーディオコントロールを有効にする

SEBタスクバーに音量調整コントロールを表示するかどうかの設定です。

  • No(推奨):試験中に音量操作が必要なケースは少ないため、通常はNoで問題ありません。音声を使う問題がある場合はYesにしてください。

⑬ スペルチェックを有効にする

記述式回答欄でスペルチェック機能を有効にするかどうかの設定です。

  • No(推奨):スペルチェックが解答の補助ツールとして機能してしまう可能性があるため、試験ではNoが一般的です。

⑭ URLフィルタリングを有効にする

試験中に学生がアクセスできるURLを制限・許可する機能です。特定のWebページを参照しながら解答させたい場合などに使います。

  • No(推奨):通常の試験では特定URLへのアクセスを許可する必要はないため、Noのままで問題ありません。

4. 設定を保存して動作確認する

各項目を設定したら「保存してディスプレイへ」をクリックして完了です。

先生ロールにはSEBの制限をバイパスする権限がデフォルトで付与されているため、先生アカウントでアクセスすると通常ブラウザのままクイズが開いてしまいます。 「ロールを学生に変更して確認」という方法でも同様にバイパスされます。

SEBが正しく機能しているかを確認するには、別途学生アカウントを用意して通常ブラウザでアクセスしてください。「このクイズはSafe Exam Browserでのみ受験できます」というメッセージが表示され、クイズを開けない状態であれば正常です。

学生アカウントでクイズのトップページを開くと、下部に次の3つのボタンが表示されます。

ボタン役割
Safe Exam BrowserをダウンロードするSEBをまだインストールしていない学生向けの公式サイトへのリンク
Safe Exam Browserを起動する(試験に進む)クリックするとSEBが起動し、試験画面に進む。通常はこれを使う
設定をダウンロードする.seb ファイルをダウンロードする。通常は使わないが、「起動する」ボタンでSEBが起動しないトラブル時に、このファイルをダブルクリックすることでSEBを起動できる

「設定をダウンロードする」ボタンは非表示にする手段がなく、学生画面にも常に表示されます。ただし誤ってダウンロードしても害はなく、トラブル時の代替手段として役立ちます。事前に学生へ「通常は使わないボタン」と案内しておくと混乱を防げます。


学生への事前案内

SEBは学生自身がインストールして準備する必要があります。試験前に以下の内容を周知してください。

インストールと起動について

Safe Exam Browserの公式サイト(https://safeexambrowser.org/download_en.html)から、使用OSに合ったバージョンをダウンロードしてインストールします。インストールは一度だけ行えば、以降の試験でも同じSEBをそのまま使えます。 別のクイズや別のコースでも再インストールは不要です。

ただし以下の場合は対応が必要です。

  • 別のPCで受験する場合 → そのPCにSEBをインストールする必要があります
  • SEBのバージョンを更新した場合 → 管理者・先生側の設定変更が必要になる場合があります(学生自身では対応できません)

受験前の注意事項

  • MoodleのID・パスワードを手元に控えておく: SEB起動後はパスワードマネージャーや他のブラウザを参照できません。事前にメモしておく必要があります。
  • 2画面(デュアルディスプレイ)の接続を外す: 外部モニターを接続したままSEBを起動しても、サブモニターは使用できなくなります。受験前にケーブルを抜き、画面1枚の状態で起動してください。
  • 参考資料は別のデバイスで: 参考資料を参照する場合は、受験するPC・Macとは別のデバイス(スマートフォン・タブレット・別PC)を使用してください。
  • 管理者権限が必要な場合がある: PCの設定によってはSEBのインストールや起動に管理者権限が必要です。自分のPCでインストールできない場合はIT担当者に相談するよう案内してください。
  • 「設定をダウンロードする」ボタンは通常使わない: クイズ画面に表示されますが、通常は「Safe Exam Browserを起動する(試験に進む)」ボタンを使います。「起動する」ボタンでSEBが開かない場合のみ、「設定をダウンロードする」でダウンロードしたファイルをダブルクリックして起動してください。

事前動作確認を必ず実施する

初めてSEBを使う試験では、本番前に練習用クイズを同じSEB設定で公開して、学生に受験させることを強くお勧めします。

  • PCの故障や設定の不備により、本番当日にSEBが起動しないケースがあります
  • 試験前日までに動作確認を済ませてもらうことで、当日のトラブルを大幅に減らせます
  • 万が一のトラブルに備えた代替手段(紙の解答用紙など)をあらかじめ用意し、学生にも周知しておくと安心です

まとめ

対象やること
サイト管理者追加プラグイン不要。必要に応じてテンプレートを作成・登録(任意)
先生クイズ設定の「Safe Exam Browser」セクションを展開し、「Yes – 手動設定する」を選択・各項目を設定。動作確認は学生アカウントで行う
学生SEBを一度インストール(以降は不要)、ID/パスワードを手控え、2画面の解除、事前動作確認

SEBはあくまでも補助的なツールです。試験の公平性を高めるためには、クイズのログや回答時間のレポートと組み合わせた確認も有効です。まずは練習用クイズで動作確認から始めてみてください。

参考リンク