2025年1月31日 宮田 純也(一般社団法人未来の先生フォーラム 代表理事/横浜市立大学 特任准教授)
これまで「DX時代の学校教育-変わる社会・学校・学びを概観する-」をテーマに連載を続けてきた。本連載を通じ、学びの変容がより良い学校教育の創造につながる点について、ご理解いただけたのではないだろうか。学校教育を転換するためには、教師自身も変わらなければならない。
本章ではそのような問題意識を基にして2017年に私が創設した「未来の先生フォーラム」をご紹介したい。
まず、中央教育審議会は令和4年10月5日に発表した「『令和の日本型学校教育』を担う教師の養成・採用・研修等の在り方について~「新たな教師の学びの姿」の実現と、多様な専門性を有する質の高い教職員集団の構築~(中間まとめ)」において、「教師の学びの姿も、子供たちの学びの相似形」であると述べている。すなわち、これまで本連載で考察してきた学校や学びの変化は、子どもだけでなく教師も当事者として関与すべきものである。そのため、教師の学びの在り方も変化する必要がある。
教師の学びも与えられるだけではなく、自ら内発的に学ぶことや、SEL(社会的・情動的スキル)を重視する学びへの転換が求められているといえる。
このような背景の中で、教師の新たな学びを描くための有効な概念の一つとして「実践共同体(Community of Practice)」を挙げたい。
実践共同体とは、「特定のテーマや関心、問題、熱意を共有する人々が、持続的な相互交流を通じて知識や技能を深める集団」(Wenger et al., 2002)を指す。この概念は、ジーン・レイヴとエティエンヌ・ウェンガーが『Situated Learning』(1991)で提唱し、その後ウェンガーらによってさらに発展された。実践共同体の構成要素は、①共有する関心や知識の対象である「ドメイン」、②メンバー同士の関係性を築く「コミュニティ」、③経験や知識を共有するための具体的な「実践」の3つである。この枠組みは、組織内での知識共有や教育現場での協働学習の促進、地域課題の解決など、さまざまな分野で重要な役割を果たしている。
高度化するDX時代の学校教育では、教師自身の高度化も必要である。SELを活用した学びの提供や、一斉教授からファシリテーションへの授業形態の転換が進む中で、「学び(learn)」と「学びほぐし(unlearn)」を促進し、教師が主体的に学ぶ環境を整えることが重要である。こうした場を全国の教育関係者が共有し、互いに交流する場として「実践共同体(Community of Practice)」を学校外に創出することは、教師の高度化に寄与すると考える。
「未来の先生フォーラム」では年に1度、東京にある大学のキャンパスで2日間にわたり数千人規模のリアルイベントを開催するとともに、企業などと連携して数百人が参加するオンラインイベントも実施している。
また、より良い実践共同体を創造するために、単著『教育ビジネス-子育て世代から専門家まで楽しめる教育の教養-』(クロスメディア・パブリッシング)や編著『SCHOOL SHIFT』『SCHOOL SHIFT2』(明治図書)、監修本『16歳からのライフ・シフト』(東洋経済新報社)などの出版を通じ、特定のテーマや関心、問題について発信し、それに共感するコミュニティの形成を試みている。さらに、これらの知見に基づき、さまざまな学びの環境や多数のプログラムを提供している。リアルイベントでは多数の分科会を設け、経験や知識を共有する場を提供することで、時代に即した学校教育を創造し続ける実践共同体を育み、学校教育の転換(school shift)に貢献していきたいと考えている。
参考文献:
・宮田純也. (2025). 『教育ビジネス-子育て世代から専門家まで楽しめる教育の教養-』. クロスメディア・パブリッシング.
・宮田純也 編著. (2023). 『SCHOOL SHIFT』. 明治図書.
・宮田純也 編著. (2024). 『SCHOOL SHIFT2』. 明治図書.
・リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット 著、宮田純也 監修. (2023). 『16歳からのライフ・シフト』. 東洋経済新報社.
・エティエンヌ・ウェンガー著、櫻井祐子 訳.(2002). 『コミュニティ・オブ・プラクティス: ナレッジ社会の新たな知識形態の実践』.翔泳社
