Martin Dougiamas 氏との対談

2017年3月1日  |  プレスルーム

Moodle Moot 2017 JPにおける Moodle創業者 & CEOである Martin Dougiamas 氏と弊社代 表松崎 剛が対談を行いました。

当初、翻訳だけを載せる予定だったのですが、とても良いお話が聞けましたのでビデオも公開することとなりました。そのために、録画状態はよくないのですが、ご容赦ください。
日本語字幕も乗せています。

世界標準であるMoodleはあらゆる教育方法に適応できる

松崎 本日は、Moodleの使い方についての日本と世界、世界標準との違いをお話ししたいと思っています。いくつかの質問をさせてください。
最初の質問です。なぜMoodleなのですか?
現在、たくさんの新しいLMSが日本に入ってきています。特にここ日本では、国産のLMSも数多くあります。そんな状況の中でなぜMoodleなのでしょうか?

Martin はい、Moodleはとても大きなプロジェクトです。私が15年-16年前に着手したのですが、それ以降世界の巨大なコミュニティーによって開発されてきました。
Moodleは世界の学校や大学の90%近くに使われています。
南アメリカ、ヨーロッパで沢山、USAをはじめ、オーストラリアやアフリカでも使われています。
全世界で多くの人に使われることの良い点は、もしたくさんの人々があるプロダクトに関心を持つと、そのプロダクトは機能強化、ヘルプ、サポートと、より良いプロダクトに育っていくのです。
Moodleは非常に多様性があります。15年以上も教育者自身が作っているからです。
そして、やりたいことは何でも可能になります。

松崎 Moodleは先生方によって長い間作られてきたので、多くの経験を有しているということですね。

Martin その通りです。
Moodleはとても成熟したプロダクトであり、数学、化学、文学など全ての科目に使われています。
Moodleはどんな先生が抱える課題にも応えています。
先生が何かを教えたいときに、Moodleは常にそれを可能にしてくれるわけです。

松崎 それぞれの先生は異なる教え方をしているが、Moodle はそれに対応してくれるということですね。

Martin その通りです。
そして、私たちは非常に多くの他のソフトウェアとの統合も実現しています。

松崎 例えばどんなことですか

Martin あなたが物理か化学を教えていたとします。あなたには実験室が必要ですが、それはとても高価です。物理的な実験室を生徒に与えることは難しいかもしれません。そのようなとき、他の人が作ったものですが仮想実験室のソフトウェアがあり、それがMoodleに統合することができるのです。Moodle のコースで活動[実験室]を加えるだけです。この統合はとても面白いですね。

松崎 なるほど、それはMoodleがオープンソースであることに起因しているのですね。

Martin まったくその通りです。

松崎 ありがとうございます。

Moodleのアウトソーシングは対費用効果で有効である

松崎 2つめの質問です。
非常に多くの大学や企業がMoodleを使っています。それらの多くは組織のIT担当者が運用していますが、実は日本では内部のIT担当者は多くはないと言われています。内部IT担当者によるMoodleの運用についてどのようにお考えでしょうか。

Martin もちろん、Moodleがオープンソースであり続けることの1つの理由は、誰しもMoodle を入手し使い始めることが許可されていることです。
しかし、大学において、Moodleは大きな規模で使われることがあります。そして、Moodleはいったん使われ始めるとどんどん拡張していきます。Moodleは大規模システムになり大学にとって重要なシステムに成長します。そうなると信頼性や良いバックアップが必要となります。今年、翌年、翌々年の運用プロセスとセキュリティが必要となります。そうです、Moodleの運用は大きな業務になりその面倒を見る人はエキスパートでなければならなくなります。
Moodleが正しい方法で運用しないことは、大学にとって問題です。Moodleの経験をもったエキスパートによって行われると運用は安価になることがあります。内部の人々のほうが高くつくことがありますね。

松崎 内部で運用する方が安価であると考えがちですが、実際には、よりコストがかかってしまう事があるわけですね。

Martin はい、トータルコストを考えるとアウトソーシングはよい解決方法の一つです。

松崎 ありがとうございました。

Moodleパートナーの活用

松崎 先ほども申しましたとおり、日本の大学にはITスタッフがあまりおりません。その一方で、日本にもMoodleのベンダーは多数います。
実際、私どももMoodleパートナーですが、その他の非公式のベンダーも多数あります。
この状況についてはどう思われますか?

Martin そうですね、まずMoodleの需要が高いことはうれしいですね。
ただ、Moodleを使う皆さんに理解していただく必要がある重要な点として、このソフトは無料で使えますがその開発はタダではない、ということです。
私と私の会社、そしてMoodleの開発者には多くの出費が必要なのです。
パートナーの皆様もMoodleのエコシステム(*1)に欠かせない存在です。Moodleの開発者に資金を拠出してくださっているのは彼らですからね。優れたMoodleの製品をお望みなら、Moodleのエコシステムが機能するよう皆さんの協力が必要なのです。それを可能にするのが、Moodleパートナーを介した利用です。
Moodleパートナーを通して利用していない場合、その利用者はお金をMoodleのエコシステムの外に投じていることになるのです。
それではMoodleのサービス向上にはまったく貢献していないことになります。
理にかなった方法としては、Moodleパートナーをご利用いただくことだと思います。
私たちは、Moodleを利用する際には、必ずMoodleパートナーをお選びくださるようお願いしております。
全世界にMoodleパートナーは85団体あります。それぞれが大学や企業、学校など世界各地の多数のクライアントを支援しています。こうした各グループの経験を集成すれば、大きなものになります。

松崎 日本ではMoodleのエコシステムはあまり広く知られてはおりません。

Martin ええ、そうですね、その点でMoodleは他とは違うと考えています。Moodleはオープンソースでコミュニティ・ベースのソフトですから、全体像をとらえる必要があります。
どこかの会社から携帯電話を買うのとは違うのです。携帯電話購入では、入手先の会社のことなんてどうでもいいわけです。その電話が気に入ったということであって、GoogleやAppleの業績なんて気にしませんよね。これは、こうした企業は巨大な営利企業だからです。
でもMoodleは、コミュニティ・プロジェクトなんです。
Moodleを利用したりそのメリットを得たいなら、利用者の皆様には何らかの貢献をしていただくことが必要なのです。

松崎 貢献は日本ではあまり一般的ではないのです。

Martin わかります。でも、まずは日本の皆様にもその点をご理解いただきたいですね。
社会貢献というのは、日本の人々の生活の中でも他の分野では何か行われていると思いますよ。
村や町などの小さなコミュニティでなどで暮らしていれば、みんなお互いに助け合いますよね。ですから、社会貢献というのは決して、馴染みのない概念ではないはずです。Moodleは1つの巨大な村のようなコミュニティなわけです。

松崎 ええ、Moodleは大きな1つの村というのはとてもよく分かります。
ありがとうございます。

学習プラットフォームとしてのMoodle上とコンテンツ共有

松崎 次の質問ですが、Moodleは巨大なプロジェクトで好評を博しています。
日本では似たようなコンテンツを多くの企業が異なるLMS上に作っています。
たとえば、セキュリティの基本とか、コンプライアンス とか、そういったコンテンツですね。

Martin それは、無駄ですね。

松崎 私はMoodleマーケットという考え方を持っています。
企業や個人がMoodle上の優れたコンテンツを開発し、そしてそれを他の企業や大学が購入して、
結果としてみんなハッピーになるという仕組みです。

Martin Moodleを共通の学習プラットフォームとして捉える事の利点は大きく分けて2つ挙げられます。まず、ある場所で利用している人が別の場所で利用しても、同じプラットフォームであるということです。だから場所を変えても、ああ、これなら使い方を知ってる、となるわけです。これなら教育者を含め、利用者は無駄な時間を省けます。
もう1つは、コース、コンテンツを開発した場合、それを広めて他人に販売することができます。高い水準のコンテンツを広める方法になるわけです。
Moodleのコンテンツは非常に高いレベルですからね。PDFなどのファイルを作ってそれを何かに取り入れることは簡単です。しかし、学習のコースとなると、それは構造化された活動ですよね。高いレベルが求められるのです。
そこには世界的な基準というものはありませんが、Moodleは事実上の世界基準なのです。数多く存在しますからね。
たとえば先ほども申しあげましたが、ブラジルのような国では、学校や大学の90%が同じプラットフォームを利用しているため、多くのことをいつでも共有することができるのです。
高品質のコンテンツを開発(そして流通)するマーケットに可能性があれば、それは素晴らしいことです。eラーニング全般の質を高めてくれるわけですから。

松崎 そのとおりですね、ありがとうございます。

大学向けMoodleとオンプレサポート

松崎 私たちは大学向けに2つのサービスを提供しています。1つはオンプレミスサポート、クラウドではないMoodleのサポートです。もう1つは大学向けのMoodleです。

Martin もう少し詳しく教えてください

松崎 日本では、クラウドではなくオンプレミスでのMoodleも多いですが、オンプレミスでは多くの異なる環境が使われているます。オペレーティング・システム環境やphpバージョンなどが異なるということですね。Windows上でのMoodleも多く存在するのですよ。
ただ、そのような方法を取っている人たちもヘルプやサポートを必要としています。
私共そのような利用者に対し、ステージング・サーバーを使ったオンプレミスでのサポートを行っています。私たちは同じシステムをクラウド上に作ります。
そのシステムはオペレーティング・システムを含みます。Windowsバージョンもあります。
まず私たちはステージング・サーバーでテストを行いお客様に合った最適のソリューションを提供しています。それがオンプレミスサポートです。

Martin それは、良いアイデアですね。それなら、あらゆる変更やアップグレード、コンフィギュアなどをまずはステージング・サーバーで試してから、実施展開できるわけですからね。

松崎 もう1つが大学用のMoodleです。Moodleには多くの機能がありますが、日本では使わない機能、不要な機能があると、それに過剰反応する人がいるのです。

Martin そのために、インターフェイスが複雑に見えると。

松崎 はい、私たちは標準Moodleにパーミッションなどのよく使われる設定をほどこし、さらにはプログレスバー、PoodLLなどのプラグイン などを加えました。そして、あまり使用しない機能を省きました。

Martin なるほど。そもそも、Moodleはプラットフォームになるようにデザインされています。
私がよく例に挙げるのが、スイスのアーミーナイフです。スイス・アーミーナイフには多数のツールがありますが、そのすべてを必要とする人はいません。
Moodleのサイトを導入する人の仕事も、対象となった状況を検証して、何が必要でなにが不要かを見極めることです。必要のないものはオフにする。また他に必要なものがあればそれを加え、LMSを作り上げます。だから私はMoodleのことをLMSメーカーと呼んでいます。

松崎 LMSメーカー、いい言葉ですね。

Martin なぜかというと、自分に合った完璧なLMSを構築できるからです。あなたがおっしゃったことはまさにそういうことです。大学向けのLMSを開発してらっしゃると。
日本の顧客と話し合って最適なLMSを作り上げる。それは大変すばらしいことです。

松崎 ありがとうございます。

Martin そういった動きを世界全体で見たいですね。
日本には日本にあった方法で、また他国にはまたそれぞれ違いがあるでしょうからね。
それを実施するためには専門技術が必要ですが、実際にMoodleをテーマやその他の事項に沿ってスタイルアップすることができれば、世界でも類を見ない最高の製品ができるはずです。うまく応用されたMoodleなら、既成のLMSでは太刀打ちできません。

松崎 私たちはMoodleコアコードには手を入れないように心がけています。Moodle のバージョンアップによる新しい機能に対応するためです。

Martin ええ。今、特に大きな組織向けにいろいろ新たなものを準備しているところです。

松崎 それは楽しみですね。

Martin 何か必要なものがあれば、ご連絡下さい。実現可能ですよ。
これこそがMoodleパートナーであることの利点なのです。

松崎 マーティンさん、本日は貴重なご意見をいただきどうもありがとうございました。


(*1)Moodleのエコシステム
moodle-ecosystem
MoodleMoot US 2015におけるMartin Dougiamas 氏の基調講演より

株式会社 イーラーニング

株式会社イーラーニングでは、Moodleを用いてお客様の会社、学校に最適なeラーニングを提供しています。 Moodleでの構築、サポート、教育、コンテンツ開発、SCORM 対応等をワンストップでお受けしています。また、内製eラーニングのアドバイス等もさせていただいています。

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